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ちくっ、どころか容赦なくぶすっとささった針に泣きそうになった。
しかも一回だけじゃなくて何度も。
「あーあ。
泣きそうな顔して。
可愛いね」
麻酔の注射が終わると、なぜか和久井先生はゴム手袋とマスクをはずした。
間近に見える、口元のほくろ。
「リラックス、リラックス。
あとはもう、痛いことなんてないから」
髪を撫でる手が気持ちよくて、落ち着いていく。
「ん?」
見上げると、レンズ越しにあった目が優しく笑った。
「そろそろ麻酔、効いてきたかな」
軽く私のあたまをぽんぽんすると、和久井先生は椅子を立ってどこかにいってしまった。
戻ってきたときには手袋とマスクを再び装着してたから、手を洗いに行ってたのかな。
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