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「口、開けて」
比較的素直に口を開けると、器具をつっこまれた。
一番奥の親知らずだから、ずっと大きく口を開けてるのは疲れたけど、和久井先生の腕はいいのか、ぜんぜん痛くなく歯は抜けた。
「がんばったご褒美」
脱脂綿噛んで血が止まるのを待ってる私に、マスクをはずすと和久井先生はおでこに口付けしてきた。
「……んんー!」
「ん?
治療が全部終わるまで、こっちへのキスはお預けだよ?」
長い指で私の唇をちょんちょんすると、楽しそうに和久井先生が笑う。
……滅茶苦茶顔が熱い。
おかげで血がどばって出た気がする。
どきどきと早い心臓の鼓動。
いや、これはだいっきらいな歯医者にいるからで。
吊り橋効果なんだから、勘違いするな、私ー!!!!!
【終】
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