第1章

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目を開けると、そこには、宝石箱をひっくり返したような夜空が広がっていた。 男は身体を起こして周りを見渡す。 東の方角の地平線が薄っすらと明るくなり、太陽が昇る気配を見せている。 包まっていた毛布にもう一度身体を横たえ、東の空がもう少し明るくなるまで、満天に広がる星空を眺め続けた。 星空を見上げながら男は口の端を歪ませ、皮肉な笑いを浮かべる。 14光年先の星に向かい、帰ってくるまでの約30年間宇宙船に乗っていながら、星を見たのは目的地の星の地表にいた、2年間だけ。 東の方角から段々星が消え、空が明るくなって行く。 起き上がり、枕にしていたリュックサックからビスケットを2枚取り出し、水で流し込む。 身体を横たえていた毛布を畳み、リュックサックに括り付け、立ち上がり歩き出す。 30年間、地球時間で約3000年の間旅を続け、男を含む15人の男女が地球に、故郷に辿り着いたとき、着陸の失敗で14人の仲間が死亡。 男1人が生き残った。 墜落現場で救援隊を待ったが、1週間経っても、10日経っても、救援隊は来ない。 痺れを切らした男は仲間の遺体を埋葬し、墜落途中のデータに記録されていた、街と思われる場所に向かう事にする。 墜落の凄まじい衝撃を受けながら、奇跡的に生き残っていたコンピューターの分析で、街と思われる場所まで北に10000キロ。 コンピューターに後の事を託し、男は北に向けて歩き出した。
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