第1章

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男が北を目指し歩くのは荒野、見える限り赤茶色の荒野が広がる、その所々に、ポツン、ポツンと木が生え、赤茶色の大地に色を添えていた。 荒野を歩き続け、見晴らしの良い丘の上に出る。 頂上で立ち止まり、首から下げている双眼鏡で周りを見渡し、土と砂と岩、それに木以外の物を探す。 人工的な建造物が見当たらないばかりか、人の姿も、獣の姿も、空を飛ぶ鳥の姿さえ見えない。 双眼鏡を目から離し、溜め息をつき独り言を呟く。 「人は…………人は、何処に行ったのだ? 3000年の間に何があったのだ?」 首を力なく振り、街がある方角を目指して歩き始める。 男は墜落のショックで、自分自身に関する記憶を無くしていた。 人間の乗組員が何らかのアクシデントで全員死亡しても、行った先の星のデータを地球に持ち帰る任務を与えられた、アンドロイドである事を含め、全て忘れ果てている。 アンドロイドは、超小型原子炉を体内に持ち、摂取した食物を核燃料に変換し、半永久的に動き続ける事ができた。 男は人の姿を求め、北の方角に向けて歩き続ける。 仲間の死を無駄にしない為に、貴重なデータを無駄にしない為に、歩き続けた。
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