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時折吹く風に、若葉の芽吹きが感じられる季節となった。
4月。
新学期を迎える学生に、真新しいスーツを身にまとった新社会人、新たなスタートを迎える人々でこの国はあふれかえっていた。
慣れない満員電車に顔をしかめながら出社している、青山もその一人だった。
3月に生まれ育った九州の大学を卒業。今月からは内定を得ていた食品メーカーの東京本社で勤務することとなった。
都会の人混みと交通機関の乗り換えの複雑さに四苦八苦する毎日を送っている。
加えて日々の研修で心身は疲れ切っていた。
「あと2駅・・・」
青山は念じていた。
朝のラッシュアワーの時間帯、巨大ターミナルである新宿駅で、満員の状態は解消される。
勤めている会社は、新宿から4駅先。
その区間は、座席に座ってゆっくりできるのだ。
2駅の間を耐え忍び、新宿に到着すると、いつも通り多くの乗客が降車した。
目の前の座席が空き、青山はふぅっと息をついて腰を下ろした。
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