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就寝法といっても、お気に入りの枕の選び方や眠るときの姿勢についての話ではない。
これは今年になって施行された法律の一つなのだ。
成立の背景には、日本人の睡眠事情がある。
「眠らない民族」と表現されたことがあるように、国際的に見て日本人の平均睡眠時間はかなり短いとされる。
そして、睡眠時間が長い国のほうが国民の幸福度が高いというデータもあったそうだ。
早朝から夜遅くまで働くことか珍しくない日本社会では、睡眠時間がないがしろにされてきたとされ、それが国家的問題にまで飛躍したのだそうだ。
「いくらなんでもやり過ぎじゃないかな・・・」
右手につけた特殊な時計を一瞥し、青山は苦笑した。
睡眠の重要さを認めた政府は、平均睡眠時間の目標値を8時間に設定。
達成具合を図るために、国民一人一人に睡眠時間が記録される特殊タイマー付きの時計を配布し、常時身に着けることを義務化した。
風呂で熱いお湯に浸かるときも、激しい運動中も、である。
時計を身に着けなかったものを罰する規定まで設けられている、と聞いたことがあったが、真実かどうかはわかっていなかった。
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