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出るかどうか迷ったが、入社したての新入社員だ。
会社の誰かが連絡事項を伝えるために電話してきたのかもしれないと思い、電話に出た。
「もしもし」
「青山さんの携帯電話でよろしいでしょうか」
低い男性の声だった。電話越しに、威圧感を感じる。
「そうですが・・・」
「私、法務省の井上と申します」
法務省・・・?
国家公務員、官僚だ。採用試験では、筆記試験の後に面接を受ければいいという話を聞いて、大学時代に受けようかともおもったが、難しすぎてやめた記憶がある。
「法務省って、あの官僚さんですよね?そんな偉いお方が、どういったご用件でしょう?」
恐る恐る聞いてみる。自分には身内にも、友人にも国家公務員となった知り合いがいなかったため、なんとなく引け目を感じて下手に出た。
「用件ですが、青山さんのご両親の件です」
「はぁ、親が何か?」
なにか新手の詐欺かとも思い始め、すぐに適当な口ぶりになっていた。
「ご両親はもうこの世にいらっしゃらないので、それだけをお伝えしようと思い、連絡を差し上げました。よろしくお願いいたします」
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