ご主人様とともに

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 その夜、ご主人様は小間使いに命じられました。 「ねえソネット、だいぶ暖かくなってきたわ。そこの手袋はもう片付けてちょうだい」 「かしこまりました、大奥様」  小間使いは私と妻の埃をブラシでていねいに(はら)い、ミンクオイルを薄く塗りこみます。オイルが乾いてから私たちを薄紙に包み、マホガニーのチェストに収めました。  チェストの抽斗(ひきだし)がゆっくりと閉められていきます。 『おやすみなさい、あなた』 『ああ、おやすみ』  そして私たちは再びご主人様にお召しいただく秋が来るまで、しばしの眠りにつきました。              終わり
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