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フードスペースがないコンビニだったからな、駐車場の車止めに寄っ掛かって食ったんだ、あんまん。1m程の幅に2人並んで。
緊急事態的に叫んだ片桐美羽が連れ込んだのは異世界だと思い込んでいた店の中。鼻水と冷たい指先にビックリしたんだろう、速攻で温かいお茶とあんまんをご馳走してくれたんだ。
ここは静かな住宅街のコンビニだから騒がしい客も居なけりゃ気合いが入った車も来ない。それ程寒々しい雰囲気なのに、2人並んで食べていると、俺らの周りだけは頬が緩む空気が流れているって感じがした。
温かいのはあんまんとお茶のせいだけじゃない。コイツのせいだ。凍えた体を気遣ってくれた優しい気持ちと、隣にいるのが片桐だったからだ。さっき急速冷凍した心はもう、ここはドコってくらいに常夏化していた。
「はふっ、あちっ、ねえ周防くんおいしい?」
「やばいうまいうまい、片桐ありがとな」
「えへへへへ、ごっつあんです」
「俺こそごっつあんです」
大袈裟なあんまんの湯気。
腕を動かすたびにお互いの袖が触れ合う布ずれの音は、密着して並んでいる証拠。
1人よりも2人、寒いより温かい、待っている寂しさよりも熱い熱いと頬張る会話はお互いに頬を赤くした笑顔で。小さくなって震えていた時とのギャップが大差すぎて『これって俺、幸せじゃね?』って感動してた。
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