おまえに言いたい事がある。

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 目頭が熱くなったね。どんだけ目的意識が強いバカ正直な奴なんだ俺は。コンビニで待ち合わせなら、おやつを買うぐらいの頭脳と心の余裕を持とうよ。  煌々と明るく穏やかな匂いがする店内と、冬将軍一斉攻撃を防御している俺とのギャップが酷い。  ナニコレ、あっちは平和な空気がドップリ流れてやんの。むっちりと太った店員が垂れ目でにこやかな恵比寿顔、しかも半袖。おかしい、何かが変だ。ああそうか、どうやらそっちは春なんですね。  現実世界では時折吹き付ける北風のせいで、目尻に涙が溜まってんのにさ。きっとガラスの壁の向こうは異世界に違いない。見るな、見てはいけない挫けてしまうと背を向けた。  待ち合わせはコンビニなんだから店内で待てばいいのに、あいにくその考えは無かった。俺は忠犬ハチ公だった。俺が迷惑をかけたから待ち合わせをする羽目になったんだと、ひたすら真面目に待っていた。  もうすぐしたら姿が見えるはず。右の横断歩道からやって来る。だから耐えろ、寒さに負けねえよ、と。信号機と気弱そうな電灯でぼんやり明るくなっている一画に、縋るような固定視線で待ち続けた。負けず嫌いなくせに小さく地団駄を踏みながら。   ああ、あんまん食いてえな。空から降って来ねえかな。マッチ売りの少女みたく幻でもいいからさ。そういやあんまんの話には続きがあったな。バカがバカみたいに盛り上がっていたっけ。えっとーー……。 『あんまんは、オッパイみたいだと思わねえか?』
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