おまえに言いたい事がある。

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 要するに掴み所がないとゆーか。ざっくり言えば『自由な猫系不思議ちゃん』って感じの女でさ。丸顔で目ん玉がデカくて髪も長いし結構可愛いんだけど、いつもアホ話ばかりする女だから、異性を意識させずお互い気軽に喋るって感じで仲が良かった。  背後で頼りなさそうに照らしていた灯りたちから徐々に遠ざかり、小さい人影が近付いて来る。一旦壁際の死角に入った。直後、コンビニの明かりを全身に浴び、全体像をハッキリと表した片桐美羽がやってきた。 「うおっ」  思わず出た小さい声。上げたまま下ろすタイミングを逃し、硬直した腕。  片桐美羽なんて濃紺ブレザーにひだスカート、髪をひとつに結んだいつもの制服姿しか知らない。でも暗闇から飛び出して来た彼女はいつもの印象とはまるで違っていたんだ。  おっきな白いフワフワの耳当て、白のダッフルコートにチェックの膝上スカート。茶色のムートンブーツがなんだかブカブカに見えて『可愛い子猫がやってきた』って感じだった。  マジかよ。  学校と全然違う。  なんだコレ。  こいつカス玉とか相撲ネタで喜んでいる女だぞ。ちょ、マジで想定外ってゆーか。こんな遅い時間に可愛い女子と待ち合わせをしていたって、なんなんだ俺は、とゆーか。なんか急に耳が熱くなった。 「ごめんね、寒いのにわざわざ持って来てくれて」 「おっ、おう! や、でも俺が悪いし!」  片桐美羽の事だから、てっきり毛玉だらけのスウェットと、半天とモコモコニット帽のラフな格好で来るだろうと想像していたのに。  大銀杏事件の時も、授業中に消しゴムのカス玉製作にふけっていた時も、『やっぱりコイツはアホだ』って小学生を見守るアニキ的な目で見ていた。なのに今まで通りそんな目では見れてないじゃねえかよ。なんだ、俺、まさか少し緊張してるのか?  星空と、私服マジックと、2人きりで待ち合わせた事と。  お礼を言いながら小首を傾げた仕草が『ニャーン』って甘えた白猫に見えたのと。  急に訪れた心の中の確変を誤魔化すように少しうつむきつつ、脇に挟んでいたノートを両手で差し出した。
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