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「ギャーッ、愛しの理科ノートちゃん無事生還!」
「おう、マジで悪かった、ごめん。お詫びにずっと脇で温めてやってたよ」
「わあー、この子親切にしてもらってたんだねえ、良かったねえヨシヨシ。周防くんごっつあんです!」
白いポケットから出てきた彼女の手と、待ち合わせ冬の陣を戦い抜いた指先がノートの端で触れた。寒さで震えていたはずの心臓が、予告なしに平手打ちをくらって急に跳ね起きた気がした。
「ねえ」
「ん?」
平静を装った返事をしたのも束の間、身体が沸騰して鼻の穴から湯気がピーッと出るかと思った。ギョッとした。かなり目線が下の女が爪先立ちをして顔を覗き込んでいた。
え、ええっ!?
ちょ、何?
顔がアップなんだけど!
キスを迫っている感じに見えるけど、2人の間には甘ったるいムードなんての少しも無いし。目を閉じるどころかガン見されてるし。じゃあコレはなんなんだ。現状が理解できず、向かい合わせたまま少し背中を仰け反らせ小さく逃げた。途端にガッチリと掴まれた腕。真面目顔で見つめる彼女と俺らの距離が一気に縮まった。
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