おまえに言いたい事がある。

8/16
前へ
/17ページ
次へ
「ギャーッ、愛しの理科ノートちゃん無事生還!」 「おう、マジで悪かった、ごめん。お詫びにずっと脇で温めてやってたよ」 「わあー、この子親切にしてもらってたんだねえ、良かったねえヨシヨシ。周防くんごっつあんです!」  白いポケットから出てきた彼女の手と、待ち合わせ冬の陣を戦い抜いた指先がノートの端で触れた。寒さで震えていたはずの心臓が、予告なしに平手打ちをくらって急に跳ね起きた気がした。 「ねえ」 「ん?」  平静を装った返事をしたのも束の間、身体が沸騰して鼻の穴から湯気がピーッと出るかと思った。ギョッとした。かなり目線が下の女が爪先立ちをして顔を覗き込んでいた。  え、ええっ!?  ちょ、何?  顔がアップなんだけど!  キスを迫っている感じに見えるけど、2人の間には甘ったるいムードなんての少しも無いし。目を閉じるどころかガン見されてるし。じゃあコレはなんなんだ。現状が理解できず、向かい合わせたまま少し背中を仰け反らせ小さく逃げた。途端にガッチリと掴まれた腕。真面目顔で見つめる彼女と俺らの距離が一気に縮まった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加