1輪目 リクという花

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「俺なんか誘ったって、意味ないよ? そっちのケもないし・・・・・・。ディレクターたって、トシの割には新米みたいなモンだから」 精いっぱいの大人の余裕を見せて、吉井は若者に微笑みかけた。 その微笑みに触発されたように、リクは必死に食い下がってくる。 「い、いえ、そういうんじゃなくて! 僕、ただ吉井さんと、もっとお話ししたくて。あんまり同世代の友だちいないし、落ち目だからヒマだし――」 そう言われてしまうと、人情に厚いとは言い難い吉井も気の毒になってきた。 しゅんとしたリクの様子も、なんだか放っておけない風情がある。
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