1.出会い

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   その日、僕は通学路である遊歩道を一人で歩いていた。歩道の先には公園につながる分岐がある。公園から出てきたであろう数人の子どもたちが、前から走ってきた。  僕は自分のいる位置を確認した。ちょうど歩道の真ん中だった。考える。  ――どちらかの端によけたほうがいいかな。  しかし、僕が考えている間にも僕と子どもたちの距離はどんどん近づいていく。結局彼らは、当然のように二手に分かれて僕の両脇を走り抜けていった。 「はやいなぁ。」  思わずつぶやいていた。子どもたちの足の速さもだが、決断が早いと思った。自分にもあんな頃があったはずなのに。すぐに決断ができなくなったのはいつからだろう。自分の判断に自信が持てなくなったのは…?  子どもたちは、ただ走っていただけだろう。目の前に僕がいたから避けた。別に決断するとかしないとか、誰が右にいくかとか、そんな事は考えていないだろう。その自然な反応が羨ましいと思う。
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