理由

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母が亡くなってから、桜蘭は時々懐かしい歌を口ずさんでいた・・夜来香(イエライシャン)。 「古い歌だな。」 そう言った私に 『古くても、いい歌はいいです。』 と応えた。 私が時々聞くのは日本語だったけれど、ある時、忘れ物を取りに戻った古い家の縁側で桜蘭が歌っていたのは中国語(マンダリン)だった。 空を見つめながら。 望郷ーそんな言葉が巡った。 気づかれないようにそっと家に入り、書斎に置き忘れた書類を持って社に戻った。 あの時の電車の中では、必ず近いうちに台湾に連れて行ってやると思っていたんだ。 また忙しさの中で、そんな気持ちも忘れてしまったが。 多くの心を亡くすと書いて多忙。その通りだ。
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