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第一章
古いものと新しいものが、ちょうどシンクロするとき、僕はとてつもなく素晴らしい気分になる。
それは、文化の混合のことを言いたいわけではない。文化の混合なんてものは、リビングのソファでウィスキーを飲んでいるだけで起こる。若しくは、モノレールに載っている最中でも、おこっているのかもしれない。
一度、この前、数年ぶりに――確か三年と三か月、それに二十四日ぶりだった気がする――こう見えて僕は数値、というものにうるさいのだ――モノレールにのった。丁度そのときは、夕日が沈む時間で、さらに、街の……もとい町の、かもしれない。
どちらでもいい。
兎に角、僕の足元(というよりは、下の方)では、街はクリスマス一色に染まっていた。勿論、垢と緑の二色に染まっていたのだが、別にそんなことはどうでもよい。
そもそも、クリスマスを足元で楽しんでいる中、上空では一人の人間が、夕日が沈むのをぼんやりと――宮沢賢治の銀河鉄道のジョバンニが、銀河を見上げるように――見ている、というのは、なんとも言葉にしてみれば不思議な光景な気がする。しかしそれは、バレンタイン・デーに部屋でせんべいを食べているのと大差ない、といってみれば、おかしいところは何もない。
なぜ、バレンタイン・デーとクリスマスを例に挙げたか、というと、残念ながら僕も、なぜか、といわれるまで、そんなことを考えもしなかったのだから、特に理由としてふさわしいものはないのだろう。
兎に角、僕にとって、古いものと新しいものが混ざり合うときは、とてつもなく素晴らしい時間なのだ。例えばその時、音楽を聴いていたとしても、または大好きな映画を見ていたとしても、僕はその動作をいったん止めて、その混ざり合う時間を楽しむ。
その楽しみが薄れてきたときに、僕はまた、その止めていた動作を再開する。
一時停止。そんな感じだ。
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