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第0章
さて、僕が、この話をしよう、と思ったのは、いつだったか、という記憶は定かではないが、恐らく、三日前の話だと思う。三日前に、これこれこういう話を書こう、と決意し、そして、今、この話を、完成させようとしている。別に、僕が、この話を三日前に書こう、と思った時が、二日前でも、一週間前でも、或は20年前だとしても、――その時僕はまだ、この世界に生まれてもいなかったのだが――間違いなく、この話は、ここにあったと思う。ただし、その話の内容が、少なくとも同じであったかどうかはわからない。
そもそも、この0章にあたる部分は、ほかの部分とは少々違う。それは、ほかの部分は、大抵手書きで書いて、それを、パソコンで打ちなおしている。そして、この部分だけは、そのまま、パソコン上で書いている。つまり、この0章には、「手書き原稿」なるものが無い。それは何を意味するかというと、ほかの部分とは、文章のリズム、構成、或はそういった何かが、少なからず異なった部分がある、そういうことだ。手書きとパソコンでなんか、大抵同じ事だろう、と思うことには確かに思えるところもあるのだが、残念ながら、ほかの人のことは知らないし、調べる気も聞く気にもなれないが、少なくとも、僕自身の話をするならば、手書きとパソコンで書いた文章は、何かが違っている。勿論、その何か、という部分には、リズムだとか、構成だとか、そういったことが当てはまるのだろうが、では、それが違っていて、どう影響しているのか、本当にそれらは違っているのか、そういうことは、はっきり言って、自分でもわからない。そもそも、分かる術がどこにあるのか――そういうことまでもがわからない。答えがどこにあるのか、ということよりは、答えまでたどり着く、情報が無い、といったほうがいい。
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