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「うーん……これは困ったなぁ。どうすれば君は私の話に興味を示してくれるんだろう」
「見たところ、38口径といったところか。しかし、見れば見るほど美しくない拳銃だ」
「不自然なほど自然に無視されてる!?」
その声が聞こえていない訳ではなかったが、クソほどの興味もないので、無視するのは当然ともいえる。とにかく俺は、目の前のダサい拳銃が気になっていた。
「どうして君はそんなに拳銃を調べているの? ガンマニアなの?」
「これは明確に否定しておかなければならない。俺はガンマニアではない。俺なんぞがガンマニアを名乗ってしまったら、本物のガンマニアに失礼だ。俺は、現状気になるものが三つある中、取捨選択をした結果、拳銃を調べているだけだ」
現状で気になるものと言えば、拳銃、場所、謎の声だ。謎の声に関して言えば、クソほども気にはならないが、全く気にならない訳ではないくらいの関心だ。数学記号を使って関心度を表すならば、「無関心<謎の声<クソ」くらいのものだ。
この場所に関して言えば、拳銃よりも興味はないものの、気になるものの一つと言っても良いだろう。謎の声は「部屋」と言っていたが、一面に真っ白な床が広がっているのみで、壁は見当たらない。四方を壁に囲まれて初めて「部屋」と呼ぶのではないかとも思うが、それは大した問題ではない。
問題は、ここが何処なのか、見当がつかないことだろう。もちろん自宅ではないし、壁が見えないほどに広い「部屋」の存在を、俺は知らない。目に見えるものと言えば、拳銃と白い床だけだ。この部屋は、調べるのが難しそうだ。拳銃を部屋の一部と見做さないならば、手掛かりは床しかないのだから。
謎の声に至っては、声の出どころもわからない。手掛かりが皆無なので、クソほどの興味もわかないのだ。
「なるほど。つまり君は、目に見える拳銃に重きを置いて、漠然とした部屋を次点とし、不可解な声に興味を示さないわけだ。じゃあ、私がその銃の話をすれば、聞いてくれるのかな?」
その謎の声に、初めて興味を抱いた瞬間だった。
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