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「おお? その顔を見る限り、興味津々って感じだね? 目がきらきらしてるよ!」
謎の声の指摘によると、目を輝かせるほど拳銃のことが気になっているようだ。しかしこの声、自分の顔は見せないくせに、こちらのことを表情がわかるほどの距離で観察しているらしい。なんて卑怯なやつだ。
「おいクソ、御託は良いからさっさと話せ」
「ついに私クソ扱い!?」
「クソ未満からクソ以下に格上げだぞ? もっと喜べよ」
「確かに少しだけランクが上がっているようにも感じるけれど、私の呼称がクソで固定されるくらいならばいっそクソ未満の方がマシな気もする……。片仮名で『クソミマン』って書くとヒーローみたいでちょっと格好いいし……」
「何をぶつぶつ言ってるんだ。早く話せよ下痢便」
「クソ固定どころかさらに悪化した!? これは早く話さないと、際限なく酷い呼び方されそうだね……。この拳銃はね、『愛の拳銃』というものだよ」
愛の拳銃。これまたセンスのない名前だ。
「……これ、誰がつくったんだ?」
「私だよ!」
通りでセンスがないわけだ。
「それもただの拳銃じゃないんだよ! 『愛の拳銃』で他人を撃つと、撃たれた人から理由もなく愛されるんだ」
この銃で撃たれた人間は、撃った人間のことを好きになる。なんとも馬鹿馬鹿しい。そんなものが存在するはずがない。ただ、そう思いつつも、この声が本当のことを言っている可能性を捨てきれずにいる。
壁の見えない部屋、姿が見えない謎の声、そして拳銃。普段目にしたことがない物に囲まれているからだろうか。ここならば、どんなことがあってもおかしくないのかもしれない。
「お前の話が本当だとして、この拳銃をなぜ俺に寄越したんだ」
「なぜって、君に使ってほしいからに決まってるじゃん。まだ十六歳だっていうのに、誰からも好かれなくなった君にさ」
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