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「誰からも好かれなくなった……?」
「『過去形ということは、少し前までどこかの女の子から好かれていたのだろうか』なんて考えちゃってる君に悲しいお知らせです。少し前まで近所の野良猫からの好感度が一ミリあったようですが、残酷な時の流れによって失われました。そんな可哀想な君に、この拳銃を使ってほしいんだよ」
つまり、モテなくて可哀想だから、この拳銃を使ってほしいということか? そういえば、こいつが「そんなだから」と呟いていたが、その次に続く言葉は「モテないんだよ」だったのか。余計なお世話だ。
「撃ちたい相手をここに呼べるのか?」
心臓が一度大きく跳ねた。「余計なお世話だ」と言いたかったのに、口から出た言葉が全く違かったからだ。
「呼べるよ。だってここは、君の夢の中だから、呼びたい人を思い浮かべればいい。夢は叶うものだからね」
夢。この空間を表すのに、最もふさわしい言葉かもしれない。不思議なすべての事象に対して、「だって夢だから」の一言で説明がついてしまう。まさか夢オチだとは、夢にも思わなかったわけだが。
「そう落胆しなくてもいいよ。夢だからって、全部が嘘ってわけじゃない。確かにここは夢の中だけど、ここで起きたことはすべて本当だよ。だってここは、『真実の部屋』だから。君ももうとっくに気づいてると思うけど、ここでは本当のことしか言えないでしょ?」
『撃ちたい相手をここに呼べるのか?』
この言葉は、俺の口から出た言葉だが、言いたいこととは違っていた。これが俺の本音なのか。そうならば、心から認めよう。俺は今、この拳銃に惹かれている。
「そうみたいだな。今気が付いた」
「えっ……じゃあ君、普段から他人をクソ扱いしてるの……? ドン引きだよ……」
クソにドン引きされるほど不名誉なことはないということにも、今気が付いた。
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