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「さて、君はその拳銃を誰に使いたいのかな? 銃弾は一発しか入ってないから、慎重に選ぶんだよ」
謎の声は茶化すように言った。しかし、実際に拳銃を使う相手を誰にするかというのは考え物だ。この機会を逃せば、俺を好きになってくれる人なんて、二度と現れない可能性もあるのだから。
例えば、裕福なテレビタレントに撃てば、将来は安泰かもしれない。有名な文学賞の審査員に撃てば、名誉までもが手に入るかもしれない。
なんて、考えてみたって、俺が呼べる相手は、どうせ一人しかいないのだろう。ここが真実の部屋ならば。
クラスメイトのあの子が呼び出された。いや、こんな他人事みたいな言い方は間違っている。俺があの子を呼び出した。これが俺の本心なのだ。
悩みどころなんてなかったかのように、あの子は一瞬にして現れた。誰にでも優しいあの子のことが恋しかったのだ。目の前にあの子が現れたという事実が、それを物語っている。
あの子はただ目を閉じて、「撃ってください」と言わんばかりに無防備だ。
「あの子、眠っているみたいだ」
「そうだね。起こしたければ起こせるけど、あまりお勧めはしないよ。だってここは、『真実の部屋』だからね」
俺は一つ、疑問に思っていたことを確かめることにした。
「『真実の部屋』では、誰もが……。いや、あの子も本音を喋るのか? それとも、俺だけか?」
「誰もが本当のことを喋るよ。君も私もこの子も、皆ね。……ところで、君はどうして『この子』のことを『あの子』なんて呼ぶの? 目の前にいるのに『あの子』だなんて、おかしくない?」
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