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クソの問いかけに答える義務などないだろうが、それでもその問いに関して言えば、考えるだけの価値があるように思えた。ごく自然に「あの子」と言っていたが、目の前にいる女の子のことを「あの子」なんて呼ぶのは変だ。
「あの子」と言おうとしていないのに「あの子」と言ってしまったのではないか。ここは真実の部屋だから、俺は「あの子」のことを「あの子」だと、精神的に思っていることになる。
その原因はなにか。考えられるのは、距離感だ。「あれ」と「これ」では「あれ」の方が遠くにあるように、「あの子」と「この子」では「あの子」の方が圧倒的に遠い。
手の届かない場所にいると感じてしまっているからこその「あの子」なのかもしれない。
しかし、手で届かなくとも、背伸びをしても届かなくとも、この拳銃の射程距離に「あの子」はいるのだ。
「誰かを撃つまでこの夢は終わらないよ。さあ、覚悟を決めていってみよう!」
謎の声は、俺を急かした。でも、引き金を引く前に、確認しなければならないことがあった。
あの子が目を覚ました。俺が願って、起きてもらったのだ。あの子は慌てふためいていた。
「え……? ここ、どこ? なんで君と二人きりなの?」
「聞きたいことがあるんだ。俺のこと、どう思う」
「は? 急に何なの……」
前置きなんて必要ない。あの子にどう思われようと、どうでもよかったのだ。この真実の部屋で、答えを聞ければ、それだけでいい。
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