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「え……何してるの?」
あの子はなお、恐怖でひきつった顔をこちらに向けた。あの子が見ているのは、自分の頭に銃を突きつけた男の姿だった。
「その拳銃は、他人にしか効かないよ」
謎の声が穏やかに言った。
「わかっているさ」
『他人を撃つと、撃たれた人から理由もなく愛されるんだ』『誰からも好かれなくなった』
「他人」と「誰からも」が明確に使い分けられているのではないか。そう考えて、俺は一つ確認をした。
『「真実の部屋」では、誰もが……。いや、あの子も本音を喋るのか? それとも、俺だけか?』
『誰もが本当のことを喋るよ。君も私もこの子も、皆ね』
結果は睨んだ通りだった。「誰も」には俺も含まれている。
最初は誤解していた。『この銃で撃たれた人間は、撃った人間のことを好きになる』という文言は間違っている。自分を撃っても、自分を好きにはなれないのだ。
そして、『誰からも好かれなくなった』という言葉の「誰からも」にも、確実に俺が含まれている。
「俺ですら俺を好きになれる要素がないのに、誰かに俺を好きになってもらうなんて、到底無理な話だ」
「でも、その拳銃を使えば、無理が通るんだよ?」
「それでも、他人を殺してまで、愛なんて欲しくない」
それなら俺は、大嫌いな自分を殺す。拳銃で殺せなくたって、素手で殺してやる。こんなにも近い距離にいて、届かないはずがない。
他人に好きになってもらうのは、自分で好きになってからでいい。
そう告げると、謎の声は「好きにしたらいいよ」と言った。
だから俺は、引き金を思い切り引いた。
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