5人が本棚に入れています
本棚に追加
――あと二年か・・・。
特に用もなく声が聞きたいからという理由だけで電話したり、
まして、甘い言葉を交わし合うような、俺たちではない。
口下手だからと、時々手紙をよこすあいつが、電話してきたことは、一度もない。
ーー次はいつ、あの声が聞けるだろうか・・・?
朝日を浴びながら微笑む、電話越しの君を思い浮かべながら、
狭いベッドに横になり高い天井を見上げて、
いつものように『おやすみ』と、その残像に 一人 心の中で呟く。
彼女に触れることの出来ない、この距離に、
胸の奥につかえた熱い塊を吐き出すように、
ハッ、と、短い溜め息を一つ吐いた。
全開にした窓から、ぬるい風が、記憶に刻み込まれた同じ香りの白い煙の筋を、この狭い部屋にくねるように漂い散らす。
ぼんやりとそれを眺めながら、
フランスの夏は、まだまだ暑くなりそうだな、と、
ケータイを握り締めたままの拳で、額の汗を拭った。
fin
最初のコメントを投稿しよう!