大人の恋

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千紗のママは昨夜、友達に怒りをぶちまけていて、温泉に入ると更に一層赤鬼の形相が激しくなり、夕食も泣きながら飲み過ぎになり、友達もどうしたら良いのやらと困惑な温泉女子会になり、朝食の時には落ち着きを取り戻し、友達には、ひたすら謝り、せっかくの楽しい旅の御詫びを後日するからと許してもらっていた。友達も気持ちは充分理解できると慰めていた。千紗のママの性格は明朗快活で、曲がったことは大嫌いで、不倫なんて絶対に許さないのである。選挙に出たら魔法にかけたカボチャの選挙カーに乗り、「この度美しい恋愛党から立候補致しました千紗のママでございます。私は絶対に不倫は許しません。」などと演説しそうなタイプで、混乱で靴が脱げても恥をかかないように常にガラスのハイヒールを履いていそうな片方置き忘れたとしてもまるでシンデレラのような女性だとでも言われたいのか。そのくせ、パパと離婚してから若い男を紙くずみたいに丸めてポイしていることを千紗は知っていたが、「御互い独身同士なら家庭を傷つけないから良いのよ。先日もイケメンだったけど、リニアみたいでサヨナラしたわ。」と言ったので、ベッドの上で浮いてる超電導男だったのかしらと思ったら、単に即、夜が終わってしまったと嘆き、ママは「夕方乗車して翌朝到着のブルートレインが最高。」なんて、もはや北海道までは走ってはいないのだから、何言ってるのかと千紗の頭の中には、はてなマークで一杯になってしまう。時々ママの先祖は宇宙人と血縁関係なのかと戸惑ってしまっている。とにかく、今、帰宅したら赤鬼のママが玄関で仁王立ちしているとヤバい事は避けたい千紗だった。
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