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ママから聞いていた下川でのクリスマスはプレゼントを買いに行った夜は誰も歩いていなくて、雪がシンシンと降っているだけなんだけど、何故かロマンチックで、ママは若いときにスイスでのクリスマスを過ごした事があり、同じように寒いのに家族愛が満ち溢れていたと言っていた。ママがピアノを弾いて家族皆でクリスマスソングを歌い、本当に幸せだったと。それがパパがママが飾ったトナカイをぶん投げたと言ったらパパは「偶然身体に触れて床に落ちただけで、気付いたら拾って元通りにしたよ。気付かなかったから、そのままだっただけだ。」と、ママはあんな不幸なクリスマスはなかったと、それが離婚の原因だったらしい。呆れた話だった。お祖母ちゃんも全く誰に似て気性が激しいのやら、それこそ、千紗のパパに隠し子でもいたのら仕方ないけど、パパは未練たっぷりだし、そのせいで、千紗が年の離れた人と不倫しかかったなんてママが悪いよねと、ついにこの事件の結末はママが一番悪者になってしまっていた。「今頃クシャミが止まらなくて、風邪引いたかなと言ってる。」祖母とはいつも意見が合う。「やはり今冬のクリスマス辺りには仲直りして元の鞘に納まらないのかね。」と、祖母も心配していた。「トナカイに赤鼻で笑われるよ全く。」と、キイチャンも話に加わり、三人で千紗がやってきたから、町営の五味温泉に一泊してこようかと女三人が盛り上がっていた。数日後にはパパからもLINEで、下川のお祖母ちゃんに御挨拶したいからと連絡あり、ママがそれを聞いたら帰らないとごねったら困るので、パパの事はママには内緒にしていた。雪はいつもの冬より早かったかもしれない。道北のこの街にはジャンプ台もあり、オリンピックのメダリストも出ていて、この街にジャンプ留学する若い子たちもやってきていて、冬季は全国にテレビ放映されたりしていて、オリンピック時には町民はテレビ慣れしている。ママの幼い頃の冬の思い出は駅前の横が雪がないと畑になっていて坂だからソリ遊びが楽しくて、近所の友達と滑っていたら、所有者が畑が荒れるのか、肥やしを長い柄杓でかけてきて、皆で「ワーッ」と叫んで一目散に逃げたと笑っていた。ママは友達二人で神社の巫女もやっていたらしいのに、今のママは想像を絶すると千紗は人は変わるものだとため息しかつけなかった。
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