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千紗はクリスマスの前には札幌に戻り、上司に淡々と退職届を提出してきた。便秘が治ったあとよりスッキリしていた。とにかくクリスチャンでもないのにクリスマスを何よりも大事にしていた千紗ママは、どんなことが起きてもクリスマスだけは幸せに過ごしていたのに、パパがぶち壊したと嘆いていた。しかし、千紗はこの不幸を今冬の一番大切な行事で打破することを計画していた。もはや、千紗の幸福は親の仲直りで決定すると信じていた。24日はお店はオープンで、25日は我が家の貸し切りとした。着々と準備を整えていった。パパは前日から五味温泉に宿泊していた。ケーキも注文して、24日は常連さんたちとカラオケで盛り上がり、クリスマスオードブルやら煮込み料理やら千紗も手伝った。いつもは簡単なドライおつまみがメインだが煩いママもイブからやってきて、ママの同期会みたいな感じだった。「騒ぎすぎよママは。」と、千紗の言葉も聞こえないほど皆で盛り上がり、田舎の静寂さが台無しになるほど、まるでここは、すすきのか銀座かという華やかさはママが醸し出していたかもしれない。そういう雰囲気の女だった。とてもこの街で生まれ育ったとは思えなかった。酔いすぎの母を見て、千紗は、やはりパパが居ない淋しさから、こんなにグデングデンに酔ってしまっているように感じていた。さて明晩は無事に再会できますようにと祈るしかなかった。イエス様、サンタ様と願い事を書いてツリーに吊るしたくなったが、それでは七夕になってしまう。パパにはママに内緒で連絡を密に取り合った。しくじらないようにと必死だった。翌朝はママはもう疲れきっていて、「私、今夜はパスするわ。早く寝たいわ。」と、千紗はそんなこと許さないと、「名寄の伯父さんも来るんだから顔出さないとまずいよ。」ママは「ちょっとだけにするわ。ケーキとコーヒーだけにするわ。」と言いながらも夕方まで眠っていたので段々と眼がらんらんとしてきて、「今夜も盛り上がろうぜ。」と夜型夜行性動物ママは野生の本能を取り戻してきていた。祖母は呆れ顔で、私に何で似なかったのかという表情をしながらも仕方ないと微笑んでいた。夕方になり、そろそろパーティー開始時間がやってきた。最初に到着したのは名寄の伯父さんだった。「今夜はおババ宅に泊まるわ。」と何かハプニングでも予定あるのかと ハテナの表情だった。
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