狂喜の話

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 部屋の中には二人の男がいる。俺と、もうひとり。俺とこいつは閉じ込められていた。  どうしてこうなったかは分からない。  もはやどうでもいい。  俺に重要だったのは、飯がひとり分しか与えられないこと。  そして、奴には体格的に絶対に勝てないこと。奴のからだはまるで怪物のように筋肉に覆われている。胸にナイフを刺しても心臓に届かないんじゃないかってくらいだ。  この狭い部屋でやることもなく、この男と朽ちていく。  俺はなんとか出ようとした。  窓は小さく、頑丈な鉄格子がはまっていて、とてもじゃないが出られない。あとは頑丈な鉄の扉がひとつ。飯の出入り口とのぞき穴があるだけだ。こっちもダメだ。俺より圧倒的に力のありそうな同居人でも歯が立たなかった。  あとはトイレと毛布がひとつずつ。毛布は当然奴に奪われた。飯もだ。  俺が死ぬのは時間の問題だった。奴はそうなれば邪魔なのが消えたと思うだろう。俺だってそう思う。  俺はある日、強烈な飢えから飯が来たとたんにそれにとびついた。それが奴の逆鱗に触れたんだろう。  だが、俺もキレた。  そして、ハハ、殺してやった!  俺は奴を刺し殺した。その時の感触は最高だったね。肉を力任せに突き破る感触。思い出すだけで笑みが浮かぶ。  今奴はそこに転がってる。ちょうど心臓のあたりにそいつが突き刺さっている。  さあて問題だ。  俺はこのなんにもない部屋でどうやってこのデカブツをぶっ殺したでしょう?  飯にはナイフやフォークなんかは出ない。皿はプラスチックのうえ小さくて使えたもんじゃねぇ。鉄格子をへし折るのもいくら奴でも無理。便器は和式でこれもプラスチック。  さあ、答えは解ったかな?正解者にはそこに転がってる奴の臓物をプレゼント!  健闘を祈るぜ、一面血に染まった独房からな!
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