それぞれが・・

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 弱い人を守るほうが自分には向いているのだと思った。  京子は素子を自分のマンションに招いた。 都内の中心地にある洒落た1ルームマンションだった。  素子は一目見て自分の給料じゃ絶対無理だと思った。 「さあどうぞ入ってよ、まだ片付いてないけどね」  嬉しそうに京子が言った。  ワンルームといっても一部屋がかなり大きなものでその中に小さなテーブルがあった。 「きのう一緒に住んでた男追い出したから何か気が楽になっちゃった、 で、あんたを呼んだのよ」  京子は慣れた手つきでコーヒーを淹れ二人で飲んだ。 「こんなレベルの商売やってるとサ、寄って来る男のレベルも同じなんだよね、 話す事も金、女、酒、クスリ、喧嘩、車で最後に一発大きな事やって金儲けして 遊んで暮らすんだって、バカばっかり」  素子は京子の言ってる事は正しいと思った。 「レベルの高い所に行けばそれ相応の男がいて恋愛して結婚するんだけどね、うちに来る レベルの高い男は働いている私達をセックスの家畜ぐらいにしか思ってないわ、 本性だわそれが、だからお高い医者や社長や銀行や公務員が来たら思いっきり 請求してやるんだ」  妻子がいるのにこんな所へ来てほしくないとも言った。 「うまくやってよ、犯罪にならないようにね」  乱雑に積んである雑誌に目をやって元子は一冊の雑誌を取り上げた。  コンサートの広告が載っていた、いいなあ、行って見たいなあ と呟く素子に京子は身を乗り出して見た。 「あ、それもうすぐだよ、場所も近いし、行ってみない? 私も大好きこのグループ、行こうよ」  今しか行けないよと執拗に誘われて素子も行く事にした。 すかさず調べてみるとまだチケットは残っていた。 「たまには堅苦しい制服脱いでサ、思いっきり楽しもうよ」  京子に言われて忘れていた感覚を思い出した素子だった。  コンサートの日、  野外会場で行ったコンサートは大盛況だった。  京子も素子もこの日に合わせて派手な服装で臨んだ。  素子は久し振りに興奮していた。  演奏開始から観客は盛り上がった。二人も他の客と同様に踊り、歌い、楽しんだ。  後半になると雨が降り出した。
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