第8章  一輪のバラとピンクのカーネーション(続き)

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薄暗くなった霊園を出て車に戻ると、 間もなく私たちは、とっぷりと暮れた夜に抱かれた。 そして、少しばかり夕暮れの中に長くいたせいで、 体は、随分と冷えていた。 「ごめんね。もうちょっと、早く来れば良かった」 小さく手をこすり合わせる私に、「もうすぐ温まるから」と 彼は、車のヒーターを全開にしてくれる。 もちろん私は、かぶりを振り返した。 「うぅん。私が、長々とお参りしてたから」 するとそんな私を、彼は、なぜか上目遣いで伺ってくる。 「あのさ……」 そして、明らかに言い難そうに言葉を切る。 その様子に、にわかに私の中であの不安が蘇った。 だが、 「もしかして、キモかった?」 やっぱり上目遣いのまま尋ねられた事に、私はポカンとなった。
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