460人が本棚に入れています
本棚に追加
/1513ページ
「ペン、貸してもらえますか?」
先生に訊ねると先生は反応して、スーツの胸ポケットから出して私に差し出したので、そのペンを受け取った。
廊下に居て机が無いので、壁を机の代わりにして受け取った紙に文字を書き込む。
その紙に第一希望から第三希望までの欄すべてに『大学進学』と書いて先生に笑顔で返した、というより胸に突きつけた。
「これで良いですね」
先生が用紙を掴んだのを確認すると、私は踵を返して先生の顔も見ずにそのまま教室へと戻った。
私はわざと棘のある態度を取った。
先生は女子に人気があるから面倒だ。
それに私に関わってきて欲しくない。
私の事なんて、放っておいて欲しい。
――――シャッシャッ。
今は英語の授業中。
シャッ。
私は堂々とスケッチブックに絵を描いていた。
でもノートに黒板の字を写しているようにも見えるので、皆気付いてないだろう。
あんな面倒臭い先生だし、しかも嫌いな科目だし、授業なんて真面目に聞いてらんないよ。
「西野」
夢中になって描いていると近くから声が聞こえた。
邪魔をされたことにイラッとして反射的に顔を上げると、私の目の前にいつの間にか居た一色先生と目が合った。
「今は何の時間?」
「英語ですね」
不機嫌な顔の先生に私は反抗的に笑顔で返す。
最初のコメントを投稿しよう!