460人が本棚に入れています
本棚に追加
/1513ページ
その先生の表情とあの絵が重なって見えた。
あの色はきっと、夢を諦めた哀しい色なんだ。
だからあの絵は哀しそうで儚げに見えたのかな……。
急に胸が締め付けられたように苦しくなった。
「私は先生の絵、凄く好きなのに……諦めちゃったなんて勿体無い……」
そう思うと口から勝手に言葉が漏れた。
「何で、西野が泣きそうな顔してんの」
先生は一瞬ハッとした後、少し困った表情を作る。
「私は先生に才能あると思うから……」
これは本当。
ずっとあの絵の作者に会いたかった。
だから先生だったけれど、出会えた時すっごく嬉しかった。
「……さんきゅ」
先生は俯いて答えたのでよく表情は見えないけれど、照れているようにも見える。
「私ならあの絵、買います」
これも本当。
毎日眺めたい。
「……いくらで?」
「いくらって……一万円くらい?」
「ぷっ!安いな!」
私の答えに先生は噴き出して笑った。
最初のコメントを投稿しよう!