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先生は私との約束を守ってくれて、こっそりと進路希望調査の紙を渡してくれた。
帰宅するとそれをお母さんに渡した。
「瑞季は考えている進路はあるの?」
「……美術の学校」
私の言葉を聞いた瞬間、お母さんの顔色はすぐに曇った。
「それは駄目だって高校入試の時にもあんなにも話し合ったでしょ?今、美術の学校に行ってる訳でもないから素人同然じゃない。受かるわけないわ。それにもし美大ともなれば、お金もかかるし、何より将来困るわよ?有名になれば困らないだろうけど、そんな人は一握りよ?きっと1パーセントもいない。お母さん達はちゃんと就職して欲しいの。だからお母さん達のために大学に行きなさい」
やっぱりこうなったか。
学校に行くのは私なのにな。
それよりも何で私はお母さん達のために行かないといけないの……
「……分かった」
だが私は思っていた言葉をグッと呑み込んで、紙を掴むと自分の部屋へと逃げ込んだ。
私は彼が居なくなってから諦める事を覚えた。
望んだって無駄だって。
だからきっと努力したって無駄だって。
この世には神様なんていないって気付いたから。
進路希望調査を書き込んだ後、お母さんに確認して貰ってから、理沙ちゃんに『先生に提出しなきゃいけない用紙があるから明日は先に行く。』とメールした。
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