側にいるよ。

25/28
前へ
/28ページ
次へ
…………長い時間が経ったのだと思う。 いつしか家は怒鳴り合う声が飛び交い、やがてはそれさえも聴こえなくなった。 葉月夫婦は不仲となり、男は家を出て行った。 子供たちも成長し独立した。 それでも葉月は前を向いて生きてきた。 オレはずっと、目覚めた場所、クローゼットの奥で彼女を見守っていた。 オレを入れた箱が引き出され、久しぶりに光を浴びる。 初めて見る女がオレを抱き上げた。 彼女がオレを連れ出す。 ここは………………病院? 弱々しく微笑む老女が腕を伸ばしてオレを抱き締めた。 ……………葉月………………歳を取ったな……………
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加