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一面青空が広がる仙台市。
高台にあり市内を一望できる仙台城址には、伊達政宗公の像がある。
一年を通し絶えることなく観光客が訪れ、遥か悠久の武将を思いをはせ、ここから眺める景色を堪能していく。
また市民の憩いの場所として、散策に訪れる者も多い。
―――
かわいらしい声ではしゃぎながら、五つくらいの双子の女の子が、この像の周りで追いかけっこをしている。愛らしい笑顔は、どこにでもいる子供のそれである。
しばらくすると疲れたのか、政宗公の像の後ろにある柵によりかかり、息を整えながら、ほぼ同時にそれに気が付いた。
「あみちゃん……あれ……」
「ゆみちゃん、きれいなお姫様がいる」
空に浮かぶ金色の雲の中に、髪が長く着物を着た女性が浮かんでいた。
『妾の声が聞こえるか』
無言でこくりと首を縦に振る二人。
『一つ頼みがあるのじゃ。聞いてくれるかの』
二人はやはり無言のまま首を縦に振って答える。
『妾は五郎八と申す。そなたらはまだ幼いゆえ難しい話はせんが、この地を護る為に力を貸してほしいのじゃ』
一瞬強い光に包まれた二人は、ぎゅっと目をつむり下を向いた。天守台にいたほかの観光客は全くその様子に気づいてはいない。二人は、その瞬間に『依頼』と『任務』を記憶に刷り込まれた。
目をあけると、二人は何事もなかったようにまたそこで遊びだした。
「あみちゃん、ゆみちゃん、帰るわよ」
「ママ~。ご用事終わったの?」
「ゆみお腹すいた」
「帰っておやつにしましょうね」
母子はいつもと変わらず家路についた。
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