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「亜実香さん、お客さんが混んで来たらどいてくださいよ」
「分かってます。でも昼はちゃんと働いてますし、邪魔しませんから」
「働いているんだか邪魔してるんだか分かりませんけど」
小声でつぶやいた細谷を亜実香がじろっとにらんだが、何も言わずため息をつく。
「あみ、どうしたん? そんなため息ついて」
カウンターの中にいた柚実香が、視線だけ亜実香の方を見て話しかけた。
「唐突だけど男の人ってさ、秘密って守れるものなのかしらね」
「いきなり何の話?」
「いや、その女の子もどうよって話なんだけど。昼間にちょっと相談されたの思い出したの」
話の続きを聞くべく、柚実香はカウンターの亜実香の隣に腰掛けた。
「で、その子が親友の女の子にちょっとした秘密を打ち明けたんだって」
「秘密?」
「まあ、ぶっちゃけ『初めて』の話らしいんだけどね」
脇で聞き耳を立てていた男性客は飲み物をむせそうになり、気づかれないようにそっとハンカチを口に当てた。
「ふ~んそれで?」
「女の子同志、たわいもない話をして『秘密ね!』って口止めしたらしいのよ。そしたら、親友の彼氏とその子の彼氏が友達だったらしく、なぜかその子の彼氏から『女の子同志でもそんな話するんだ。』って言われたらしいの。親友の彼氏からその子の彼氏に伝わったって考えるのが筋でしょ」
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