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『成績に文句はない伊織の、パトロン特別枠での入学を許す条件でなら、教職を引き受けてやる』
親の勧めるがまま、学園を大きくするためだけに婚姻した妻と違い、入試を終えたばかりの学園に赤堀の連れてきた伊織の、苦労の滲み出た妖艶さを纏う細い躯
繊細な日本人形のように整った美しい顔
切れ長の色気を含んだ目元を際立たせる、翳りの滲む強い光を放つ瞳に大介は
一目で心を奪われた
息子と同年代の少年に恋をして
『私の許可がなければ入学出来ない。私にも、この子の手助けをさせろ』
渋る赤堀を脅し、宥め、膝をつき、年甲斐もなく初恋なのだと懇願したのは大介
金で手に入れた恋が妻にバレないよう、慎重に行動する大介の不貞を見破ったのは、学園で妻の姓を名乗る息子
直情型で生真面目な息子が大介に向けてくる眼差しに宿るのは、大介への嫌悪
『母にバレる前に手を引け』
侮蔑を含んだ威圧的な口調で脅してくる息子に、怒りは感じても、理事長の座を転げ落ちてしまえば、全てを失う大介は蔑まれても、何も言い返せずにいる
50才を目前にした大介の恋心は、怒りと嫉妬で荒れ狂い、凶暴な欲で埋め尽くされていく
大介にされるがまま身を任せ、命じられるがまま技巧を凝らす伊織の、栄養が足りず、成長しきれなかった華奢な躯は、出会った当初から傷付いていなかった
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