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……そして、翌日。オリオンへ別れの挨拶をしようと尋ねるとオリオンは少し寂しそうな表情を浮かべながら笑ってくれた。色々あったけど獣人達とルーザの人達も随分仲を修復出来ているし、これから手を取り合って頑張って行って欲しいな…
「今までありがとうございました。随分長い間屋敷に泊まらせてくれたり、お世話になりっぱなしで…」
「何を言ってるのよ、御礼を言うのはこっちの方。貴方達がいなかったらきっと私達と獣人はお互い歩み寄る事は無かったし、私はもっと取り返しのつかない事をしていた。勿論、獣人にした事を取り返しのつく事とは思っていないけれど…」
「最初はオリオンの事大っ嫌いだったけどさ、今はちょっと好きだよ!ちょっとだけね!オレ達の為に色々動いてくれてたのずっと間近で見て来たからさ」
「……ありがとうリオちゃん。貴女も皆と一緒に行くのかしら?」
「…え?何で…」
「ライオネルから聴いていたのよ。リオちゃんは皆が発つ時に一緒に付いて行くだろうって…結構前から言っていたわよ」
…ライオネルはリオの考えている事を見通してたのか。そっか…だからライオネルの姿が余計に寂しそうに見えたのかな…
俺達と違ってリオはずっと獣人の皆と一緒だったんだもんな…そりゃ寂しくもなるよな
「ライオネルが……昨日オレが話した時は有無を言わさずに止めとけって言って来たのに…」
「その言葉振りだとやっぱりそうなのね…凄く寂しくなるわ。貴女がいないと街の明かりが一つ消えてしまうかのようだもの」
「それは…褒めてるの?」
「ええ、凄く褒めているつもりよ。元気でねリオちゃん…皆もどうか壮健で」
「オリオン、僕に魔法を教えてくれて本当にありがとう。ここまで魔法を扱えるようになったのは貴方のお陰です」
そう言ってジェーノが深くオリオンへ頭を下げる。口元を手で隠してオリオンが顔を逸らしていた…もしかして…泣いてる…?
「…ごめんなさい。泣かないで送り出すって決めていたのに……!」
「オリオン、泣かないで。大丈夫だよ!オレ達絶対帰って来るからさ!その時まで獣人の皆をよろしくね!」
「ええ…勿論…!貴女達の森も、きっと元通りに…いえ、もっと緑豊かな森にしてみせるわ」
そう言って目元の涙を拭いながらオリオンが笑い掛ける。リオもそれに応じて大きく顔を破顔させた…何かいいなぁこういうの。悲しいだけの別れじゃなくて未来ある別れって言うか…お互いが笑って別れられるの
「世話になったな。礼を言うぞ」
「そこは素直にありがとうで良くね?」
「煩い。指図するな馬鹿」
「よーし最後に試運転場で一戦交えるか」
「望む所だ。ボコボコのギタギタにしてやる」
「二人とも馬鹿な事を言っていないで行くよ。オリオン、今までありがとう。本当に感謝している」
「ええ、唯ちゃんも元気でね。毎回この二人の仲裁に入るの大変そうだけど…頑張ってね」
ルーザの入り口…俺達からしたら出口になるか。そこに獣人達とルーザの住人達が集まって俺達の事を見送りに来てくれた。道を空けるようにして左右に沢山集まってくれてる…ここまで手厚く見送られると少し気恥ずかしさを覚えてしまう
そして…道の真ん中に一人、ライオネルが腕を組んで待ってくれていた。昨日と同じように口元に笑みを浮かべたまま
「遅ぇぞ。このまま来ないんじゃねぇかと思ったぜ」
「ライオネル!あのね…!」
「わーってるよ言わなくていい。零也達が受け入れてくれたんならお前の好きにすりゃいい」
そう言ってライオネルは近付いてリオの頭を昨日の俺達にしたように…いや、昨日よりも随分と優しく撫でる。顔付きも柔らかいし…こんなライオネルの顔初めて見たかもしれない
リオは酷く驚いたようで撫でられた瞬間、びくっと身体を竦ませたが…顔を俯かせてそれを受け入れていた
「達者でな」
「…うん」
「迷惑掛けんじゃねぇぞ」
「……うん」
「怪我すんじゃねぇぞ」
「………うん……うんっ…!」
「泣くんじゃねぇ。お前はずっと馬鹿みてぇに笑ってろ」
「泣かせてんのはライオネルじゃんかぁ…!こんな事…今まで一回だってしてくれなかったのにぃっ…!!」
ぼろぼろとリオの目から大きな雫が溢れ落ちていく。拭っても拭っても溢れる涙は次々と地面を濡らし、嗚咽も聴こえ始め…それからリオが大声で泣くのにそう時間は掛からなかった
…それはずるいってライオネル。俺までもらい泣きしてしまいそうになるじゃんか
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