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血吸で肩を叩きながらカーズは重なる遺体の上に腰を下ろしている。遺体は人間と言えば人間…魔族のような、エルフのような、獣人のような、竜人のような…どこの種族かも分からない見た目をしていた。そしてカーズの顔は苛立ちを隠す事をせず、眉を盛大に顰めていた
時折、何かを思い返して舌打ちをしたかと思えば何処を狙っているかも分からない斬撃を無意味に放っている
「何やってんのよ」
「…うっせぇ黙れ。殺されてぇのか」
「苛立つのは貴方の勝手だけど余計な手間を掛けさせないでって言ってるの。この〝混ざり物〟の始末どうすんのよ」
イザベラに咎められ、カーズは立ち上がり…勢い良く血吸から斬撃を放ち遺体を粉微塵に刻んでしまった。辺りは斬撃の痕と多量の血痕だけが残り、それを見たイザベラは大きく溜め息を吐いた
「貴方ねぇ…床汚れたじゃない」
「黙ってろよ。一々小言喚いてくんじゃねぇ」
「…あっそ。別にいんじゃない?怒られるのは私じゃないし、勝手にすればぁ?」
呆れたようにそう言ってイザベラは側の壁に背を凭れさせて腕を組む。此処は一体何処なのか…辺りは薄暗く前に二人が八雲の事を見下ろしていた城の造形に酷似しているが、そこには今カーズが刻んだ〝混ざり物〟は存在していなかった。城の外も争ったような形跡は見当たらず、八雲の姿も無い
…似ているようだが、此処は前の城では無い何処かである事に間違いはなかった。彼等魔物側に付く者達の根城…と言えば良いのだろう
「あららララら。カーズ君はまた怒っちゃったんデス?折角〝創った〟のに壊しちゃったみたいデスねぇ」
「うぜぇんだよ。使い道のねぇ塵屑創りやがって」
「言いますネェ〜…あの化け物にワタシ達のお仲間ガ沢山消し飛ばされチャッタからワタシ夜鍋して創ったんデスよ?」
恐らく八雲の事を指しているのだろう。そして〝創った〟というのは…こちらも恐らく混ざり物…と呼ばれていた者の事を言っているのだろう
道化は目元を押さえ泣くような素振りをして悲しみを表しているようだが…カーズもイザベラもそれがただの見せ掛けの演技である事を疑っていなかった。この道化は何をするにしても人の事を小馬鹿にしたような演技をする…この男の言動も行動も…全てただの演技にしか思えない
「それより〝皇憑き〟はまだ来ねぇのか。今回が失敗に終わった分、舵の修正をしなきゃならねぇだろ」
「まさかあの男がアナタの方にも顔覗かせてるナンて思わなかったデスもんねぇ〜。ん〜忌々シ!」
その場で地団駄を踏んで怒りを表している…のだろう。分かり易く表している分、その行動はカーズの怒りの尾を易々と踏みしだいた
ぎろりと殺気立たせて道化を睨み付けると道化に近付いて血吸を振り上げる。そして迷い無く振り下ろしーーー……
「ウフッ♪ワタシ避けるのハ得意なんデスよねぇ」
「そうかよ。ならくたばるまで避けてろや」
「ちょっとぉ。五月蝿いから此処で暴れないでくれない?」
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