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その一言にカーズも道化もイザベラも…皆ぴたりと動きが止まる。小さく舌打ちをして振り上げかけた血吸をそのまま肩へ担いでカーズは道化から数歩離れる
道化はというと…何を考えているのかにやにや嗤いながら言葉の主を見ている。イザベラも同じく…と言っても道化のように笑ったりはしていないが、その言葉の主へ視線を向けている
その言葉の主は切れ長の鋭い目で三人を見据えている。その目から物怖じといった物は微塵も感じさせない
少し長めの黒髪を僅かに靡かせながら三人の元へ歩いて行き、先ずはイザベラへと視線を合わせた
「頼んでた物は?」
「…ええ…見つけたけど…こんなもの必要?」
そう返答しながらイザベラは懐から何かを取り出し渡す。受け取ったそれを一瞥して微かに笑うと返答を返す事なく次は道化へと視線を向ける
「お前の事を追っている奴の動向は」
「それガ全く分からずナンですよねェ〜何とか見つけようとしてるんデスけどうま〜く隠れてルみたいでェ」
「…そうか。今回の事で奴は俺達にとって邪魔になる存在だと認識した。次の手を掛ける際に現れたらお前が足を止めろ」
「エエェ〜〜?何でワタシが?追われてるのに?ワザワザ?闘わなくちゃあ?ならないんデスかぁ〜〜??」
「惚けるのも大概にしろ。お前が真面目にやれば対等に闘えるくらい知ってんだよ」
「…はいはいハイはいはいやりますよぉ。気乗りはしまセンけどね。あれと闘っても全く面白くないデスかラ」
唇を尖らせながら渋々了承する道化を静かに見据えて…最後にカーズへと視線を向ける。対するカーズは目を細めながら見返して…否、睨み返していた
仲間意識というのが希薄なのが全員から見て取れる。言動も、行動も仲間の為にといったものが微塵も感じられない。強いて挙げるのならば以前イザベラがカーズの傷を癒した程度だろう
「次はしくじるなよ」
「…お前よぉ、誰に口聴いてんだ?」
「話を逸らすな。事実を述べただけだろ」
「…これ以上俺を苛つかせるんじゃねぇっつってんだーーー!!?」
肩に担いだ血吸をそのまま振り下ろそうと腕に力を篭めた瞬間にその腕を掴まれる。振り解こうとしても全く動かず…苛つき睨み付けるカーズとは対照的に何も感じていないかのような無機質な瞳がカーズを見据えている
「イザベラ、次はカーズと一緒に動け」
「えぇ〜…面倒臭ぁ……分かったわよぉ。分かったからその人の事これ以上怒らせないでくれる?」
「………カーズ」
「…ちっ!分かったから離せよ!いつまで掴んでやがんだ糞が!!」
手を離すとカーズは忌々しそうに睨み付けている…だがそれを特に気にした様子も見せず三人を残して城の奥へと歩いて行く
不意に何かを少し考えたかのようにぴたりと止まり、ちらりと三人の方を横目で流し見ながら一言だけ
「次決まるまで此処で待機。八雲とあの男の動向だけ追っとけ」
それだけ言って顔を戻すとその後は一度も振り返る事は無く奥へと消えていった。静まり返った城にカーズの壁に拳をぶつける音と怒号だけが響いていた
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