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「……もしかして僕やっちゃいけない事しちゃった?」
僅かに顔を引き攣らせてジェーノが呟く。それもそうだ、里が鮮明に映ったと思ったらぞろぞろと人が俺達の元へ集まって来た…皆俺達を睨み付けて、携える弓を引き絞って杖を構えて……いつ戦闘開始してもあっちは問題無いってくらいに敵意剥き出しにされてる
金髪、長耳、白肌…皆一様に似たような容姿をしている。男の姿が見えないのが気にかかるが…今俺達の事を睨んでる全員が女性でめっちゃ美人。この世界全体的に顔が良い人達多過ぎないか?
…前に俺やオルガが言った容姿通りのこの人達はエルフで間違い無いと思う。オルガがエルフは外との関わりを嫌ってるって言っていたけど……こういう風に里を隠して関わりを断ってたのか…
「えーと……敵意はありません。信じて下さい」
大剣をその場に刺し両手を広げて敵意が無い事を証明したんだけど…俺達尋ねて早々に戦闘になる事多くないか?ソマールや獣人の時といい…いや獣人に関してはオルガの初手の挨拶が絶望的にミスってたからか
他の皆も同じように敵意が無いことを示してくれてる。オルガだけ相手方を顔を顰めて睨みながらだけど……有無を言わさずに掛かって行こうとしないで良かった
「…どうする」
「我々では判断しかねる…〝ファーレイ〟様は?」
「もうじき来られるかと」
「貴殿等、敵意が無いのなら暫し待たれよ。その間下手な動きは見せない様」
そう言って俺達に待つ様に促して来る。こっちとしては闘ったりしないで済んで一安心だ。闘ったら怪我させちゃうかもしれないし、女の人に手を出すのも気が引ける
それから少しその場で待っているとエルフの中を割って一人の女性がこちらへ歩いて来た。割ってといっても無理矢理ではなく、皆が道を開ける様にしてだけど
…すっごい綺麗な人だ。腰まで伸びた長い金髪、俺達を見る碧色の瞳は凄く澄んで見える。その見た目に凛とした顔付き、身に付けている白金の鎧も相俟って神聖で高貴な印象を受ける
他のエルフの人達も皆美人だけどこの人は更に…いや値踏みしてるみたいになっちゃってるな。止めよう
「先ず我等の里を訪れた目的を訊いても良いでしょうか」
俺達の目の前まで歩き、一拍置いてそう訊いて来た。尋ねた目的……目的……?いやそんなの無いんだけど…
「……たまたまです…」
「………何と?」
「僕達人を追っていて、その人の手掛かりを追っている途中で魔法が使われている痕跡を見つけたから…その魔法を解いてしまって…」
「…解いてしまってで済むような簡易な魔法は掛けていない筈なのですが…」
僅かに視線を落とし、手を顎に当てがってその人は一考する。その姿にルーギアスさんが重なった…あの人も考える時に似た仕草してたっけ
映えるんだよなぁ…容姿が整った人がそれすると。ルーギアスさんもこの人もそんな事意図してないんだろうけど
「………もうじき日も暮れます。この辺りは夜になると魔物が活発に動き出す…その中に放り出すのも心苦しい、一先ず貴方方を我等の里へ向かい入れましょう」
そう言うとその人は俺達からすれ違うように歩き、両手を翳して詠唱ーーー…あっという間に景色が覆われてしまった。俺達の後ろが霧がかったように何も見えなくなってる
「…これでよし。詳しく話を聴かせて貰えますか。生憎我等に客人を迎える場所は無いので我の家へ」
「ファーレイ様!それは…!!」
「心配要りません。この方達が悪意を持って此処を訪れていたのなら既に貴女達は遣られてしまっている…この方達はそれだけの力を有している。それをせずに我の事を待っていてくれたのだから、それだけでも信用するには事足りるでしょう」
この人もルーギアスさんと同じだ…闘わないで俺達の力量を測れるくらいの実力があるんだ。この人…ファーレイさんがここの一番の実力者と見て間違い無さそうだ
「申し訳ありません、話を切ってしまいました。先も言ったように我の家へ案内するので、ご同行願えますか」
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