0人が本棚に入れています
本棚に追加
役目を終えて、空中と言う地平線上を高速浮遊している状況に何もせず、ただただ身を任せている自分。
常識人が僕を見たら遠い空の彼方の流れ星か何かに見えるかも知れない。
そんな自分の瞳からは綺麗な空と壮大な大地の間でさ迷っている様な気分。
落ちるのか否か、今はそれすら気にならない。
しかし、自分自身がこの時間に対し心地良く、暖かく、温もりを感じている。
その一方で、死なないで....と何処からテレパシーの様に言葉が伝わってくる。
誰かの声が聞こえる、女の子の声だ。
死なないで....
諦めないで....
希望を捨てないで....
死んじゃダメ....
キット助かる...
負けないで....
生きて....
生きて…
生きて…
説教なのか励ましなのか、そんな声が幾度と無く繰り返し自分に言い続ける。
でも自分は大切な恋人を失い、大切な仲間と街までも失いかけた。
その為に命を投げ出した、いや捧げた。
あれ、今話掛けてくれている女の子、誰だっけ....?
コード.....ルビ......カリヨ.......クロノ....
思い出せない....
自分の街は何処だ?
自分の大切な仲間....誰なんだ.....?
........................
そんな状態から世界を何処まで進んだのかさえ分からず、気が付けば自分は森林区域に大きな傷跡を残して地上へ落下していた。
即死してない...なぜ....
ただ体中が過労で衰弱している気がする。
立ち上がるどころか体を起こす気力すら湧かない。
意識がもうろうとしている僕の目の前には紅竜が居て、僕を見つめている。
紅竜を目の前にして食べられる、焼かれる、そんな恐怖心は一切無く、むしろ心が落ち着いていた。
終わると言う感覚でもなく、始まると言う感覚でもない。
「君は大切な人だから、僕の身体が失おうと、僕との思い出を失おうと、何時までも君の側でずっと...ずーっと僕が見守ってあげる」
紅竜から僕に語りかけてきている。
一体何の話なんだろう...
でも僕は、紅竜から何かしてもらった覚えも無いし、何かをした覚えも無い。
忘れているだけなのだろうか...
そんな事より、君は誰なんだ...?
最初のコメントを投稿しよう!