序章 記憶喪失

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 「雇われた各傭兵同士で戦争して、負けた人間は大体死んでいった。  前の戦争では味方に居た人間も次の戦争では敵になって、なんてのはざらにあった...  この時点で先の内容を予測出来てしまうかも知れないが、オレの分隊は、ある戦いで敗れたんだ。  その戦には、オレのかつての友人で、戦友と思っていた仲間が居た。  そんな戦友を、討ち取る覚悟が遅れてしまってな...」  傭兵か、聞けば聞くほど残酷な話だ...  助け合った仲間と次は殺し合う、その時のためらいが敗北の原因なんだとしたら、闇が深過ぎる....  僕にもそんな人間が敵なら、どうしただろうか.....  そもそも、居たんだろうか…?  「そして、その戦友とベイルは?」  「本来なら負けて俺は死んじまってたが、助太刀が現れてな。  そいつが敵を追い払ったお陰で、オレの死はなんとか免れた。これがハイト、お前からの借りだ」  なんだろう、信じ難いが一概に嘘とも思えない。  「その後、僕はわどうしたんだい?」  「追い払った敵を再び追う様に去って行ったさ...  もしかしたらと思ったが、オレはそこで傭兵を辞めた。  それで雇い主にも、お前さんの話を聞けず仕舞いってワケさ」  自分がそんな事するのかな....普通なら関わりたくない場面のはずなのに。  自分の心と感覚に聞いてみるが、思い当たる節々が無い。  「本当に僕がそんな事したのだろうか、だとしたら自分は軍人...そう言う事にならないかい?」  「悪ぃがそこまでは分からねぇ...  さっきも言った通り、雇い主と職にはそこで縁を切ったんだ。  当時のお前さんにも唯一そこで直接聞けたのは、残念ながら名前だけだったさ」  「そう...なのか...」  ........  「でも三つ分かったよ」  「ん.....?」  「一つは自分の名前、さっきからそう呼ばれて違和感を感じないんだ」  それはただの記憶喪失だからなのかは分からないが、違和感が無く自分が呼ばれていると言う風な認識を得るからだ。  「二つ目は君との面識、その話だと本当に会ったことあるかも知れないって感じた」  「疑って掛かってたのか?連れねえなぁ...  まあ無理もねぇ、お前さんにとってはある意味初対面だからな」  そうだね、確かに最初から疑うのは良くないかも知れない。  これでも自分の身柄を心配してくれた恩人になる人である為、そしてこの森を抜ける為には、協力し合わないと行けない。
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