序章 記憶喪失

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 結局、ベイルの良心に甘えてしまった。  少し強引に引き止めた直後に″お安いご用さ″と言う所が、極度のお人好しなのかも知れない。  そのお人好しさでどうして元傭兵なのか、イマイチしっくりと来ない自分だが案内されるがまま、どうやら王都の西門から入った模様。  入った先は市街地の様な光景ではなく、レンガや石で作られた地面と奥行きのある。  サイドには商店街の様な街並みで、飲み屋に果物屋、魚類店にレストラン系等、様々なお店が建っている  気になる正面の先にはドーム状の建造物があり、これがどうやら闘技場らしい。  まさしく戦いの頂点を目指す為の場所らしく、そこで賭け事や闘技大会にも参加可能との事だが参加しようとは全く思えない。  そして道なりに目的地へと向かう道中も会話は続く。  「どうだ?意外と活気のある街だろ?」  「そうだね。それに門を潜った先には早速商店街と言った所がおもてなし感が漂うよね」  そんな街についての最初の感想を話していると突然、動力音が聴こえてきて正面から車が走り去って行った。  「なんだ、あれが気になるのか?」  「当たり前だよ、あの乗り物は一体?」  「あれは動力車と言ってな、俺達が昔から使っていた機関車とは違って個人的に、そして快適に移動出来る超絶オシャンティな乗り物で────」  話を纏めると最近になって少しずつ流行し始めたとても御高いプロンテラと言う研究チームが開発した個人車で、遠い所でもこれがあれば快適に且つ素早く移動出来るらしい。  「どうだ?ロマンを感じないか?」  動力車か...興味はあるけど、残念ながら機関車にも乗った記憶も無い。  そう考えると自分の記憶喪失はかなり重大なのかも知れない。  「乗ってみたい、そんな気持ちになるよね」  「だろー!だから、どうかオレと人生を交換致しましょう」  「誰に言っているのかな!?」  恐らく動力車の所有者に言っているのかも知れないが、端から見たらそんな痛々しいベイルと自分なのだろうと感じた...  それから少し沈黙が続いたが更に先へと歩き続け、商店街を抜ける手前でベイルがもうすぐこの商店街から抜けて、その先にギルドの総合役所があることを告げるので、自分はそれに頷く様に返事をした。  しかし今更ながら何故、最初に案内する場所がギルドなのかが気になってしまう。
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