第1章

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笛、と言われて博雅が晴明の顔を見る。その顔に浮かぶ笑みが、いつものシニカルなものではなくて。 「……何が嬉しいんだ?」 博雅が憮然として言う。は?と晴明が聞き返す。 「嬉しくて堪らないという顔をしている」 「……お前の笛が聞けると思うと、嬉しいのさ」 晴明が真面目な顔を繕う。その顔を博雅がしばし見つめた。 やがて諦めたようにちょっと微笑むと、博雅は懐から笛を取り出した。 月の光の中を澄んだ音が渡っていく。 笛の音に酔いしれて忘我の境地に入った博雅の横顔を、晴明が飽かず見つめていた。 了
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