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笛、と言われて博雅が晴明の顔を見る。その顔に浮かぶ笑みが、いつものシニカルなものではなくて。
「……何が嬉しいんだ?」
博雅が憮然として言う。は?と晴明が聞き返す。
「嬉しくて堪らないという顔をしている」
「……お前の笛が聞けると思うと、嬉しいのさ」
晴明が真面目な顔を繕う。その顔を博雅がしばし見つめた。
やがて諦めたようにちょっと微笑むと、博雅は懐から笛を取り出した。 月の光の中を澄んだ音が渡っていく。
笛の音に酔いしれて忘我の境地に入った博雅の横顔を、晴明が飽かず見つめていた。
了
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