第1章

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博雅が式相手に常識的なことを考える。 自分より少し年下にしか見えないその青年に、 なんとなく戸惑った。 青年はすいと立ち上がると、 こちらへ、 というように小首をかしげて博雅をいざなった。 後ろを歩くと式の裾からほろりほろりと金の花が零れる。 ……漂う香りは金木犀。 「博雅」 式に案内されてきた釣殿で晴明が出迎える。 「空が晴れ渡っている……いい月夜になるぞ」 「そう思って笛を持ってきた」 それはなにより、 と言う晴明に博雅がにこりと笑い返す。 晴明の屋敷の庭から見る月が博雅は好きだった。 他のどこで見るよりもその光が冴えわたって感じられる。
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