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そしてここで吹く笛は、
どこで吹くよりも何倍も澄んで豊かに響くように思えるのだ。
「薫、
酒を」
晴明に命じられて薫と呼ばれた式が頭を下げる。
「どうした?」
退がっていく式を見送る博雅の視線に、
晴明が問うた。
「いや……童でもあるまいに、
なぜ垂髪なんだ?」
「俺は稚児趣味は無いぞ」
晴明がちょっと憮然とした顔になる。
「今業平(いまなりひら)というところさ。
たまには良かろう……美女ばかりでも飽きてしまう」
そう言って、
陽が落ちた庭に咲き誇る金木犀を見やった。
「花が咲いている間だけの、
座興だ」
金木犀の香りを先触れに、
薫が酒と肴を運んでくる。
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