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再び開かれたその瞳に映る自分の顔を見つめてしまった。
不意に博雅が立ち上がる。
「博雅?」
晴明が博雅を見上げた。
その顔が険しいのに驚く。
「用を、
思い出した。
帰る」
「博雅!おいっ!」
慌てて立った晴明が、
身を翻そうとした博雅の袖を捕えた。
その腰に手を回して引き寄せ、
顔を 覗き込む。
「なに怒ってるんだよ」
「別に……怒ってなぞいない」
そう言いながらも、
博雅の唇は少しへの字になっている。
「こんなに澄んだ月の夜なのに、
独りで酒を飲んでいろと言うのか?」
「……式がいるだろう」
顔を背けて言う博雅のうなじを目の前にして。
その表情が見たいと晴明は思った。
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