第1章

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背後で薫が立ち上がった。 気配を感じた博雅が肩越しに振り返る。 ゆらりとその姿が揺れたと思うと、 ばらりと金の花が床に散った。 見る間にその花も砂のように 崩れて消えていく。 後に残るのは、 その香りのみ。 「式はみな、 還した……この屋敷には、 今は俺とお前だけだ」 それでも俺を独りにするのか、 と晴明が訊ねる。 博雅は返事が出来ずに黙り込んだ。 「笛を吹いてくれないか……今宵は月が近い。 嫦娥に届くかも知れんぞ」
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