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背後で薫が立ち上がった。
気配を感じた博雅が肩越しに振り返る。
ゆらりとその姿が揺れたと思うと、
ばらりと金の花が床に散った。
見る間にその花も砂のように 崩れて消えていく。
後に残るのは、
その香りのみ。
「式はみな、
還した……この屋敷には、
今は俺とお前だけだ」
それでも俺を独りにするのか、
と晴明が訊ねる。
博雅は返事が出来ずに黙り込んだ。
「笛を吹いてくれないか……今宵は月が近い。
嫦娥に届くかも知れんぞ」
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