吾輩とご主人

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 目を開けると、そこには吾輩のご主人がたっているのである。  「ごめーん! 今日、日直で遅くなっちゃって、すぐお散歩いこうねっ!」  「わん! わん!」  散歩である!  ご主人は、こうしてどんなに忙しくとも毎日散歩をしてくれるのである!  吾輩は幸せ者である!  ご主人の母君が『もう遅いから明日にしなさい』などど言うが、義理堅いご主人は吾輩と毎日散歩をすると約束したからといつものように外へと連れ出してくれるのである!  「今日は少し遅くなっちゃたけど、何とか公園の方まではいけそうだね!」  うむ!  たどりつくのである!  「わん! わん!」    吾輩は、いつもの通り元気に返事をして、ご主人はいつもの通り笑って、その角を曲がろうと_______キキキィイイイイイイイ~~~~ドシッツ!  「…」  ご主人?  ご主人が、地面に寝てしまったのである。  ご主人を突き飛ばした『くるま』と言うやつから初老の人間の女が降りてきて、『私の所為じゃない』と言って『くるま』に入って『くるま』はどこかへ行っていしまったのである。  「すんすんすん…ぺろ」  血である。  ピクリとも動かないご主人から、血が地面に広がっていくのである。  「くぅん」    またであるか?  吾輩は、ぐっと目を閉じるのである。  「ごめーん! 今日、日直で遅くなっちゃって、すぐお散歩いこうねっ!」  目を開けると、そこには吾輩のご主人がたっているのである。  散歩である!  ご主人は、こうしてどんなに忙しくとも毎日散歩をしてくれるのである!  吾輩は幸せ者である!  何度でも。  何度でも。  吾輩は、ご主人と散歩に行くのである。
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